赤く燃える部屋の中で、手を握る。 半身が本棚の下敷きになった彼女の右腕は、それでも弱々しく僕の手を握り返す。

煙と抑えきれない感情に視界が歪むが、彼女は僕の顔を見て力なく微笑んだ。

「そんな顔、しないでよ。 君は大丈夫。 …私がいなくても」

その言葉の続きを聞きたくなくて、首を横に振る。 しかし彼女は、気丈に僕の目を見つめ、言葉を紡ぐのだ。

「ねぇ聞いて。 君には、力がある。 私が欲しくて、妬んで、…そして、憧れた力が。 …だから、ね」

彼女は自分の首元に、肌身離さず掛けていたゴーグルを外す。 そしてそれを、手をとっていた僕の手に握らせた。

「私の想いを…託させてくれないかな。 君は、君が憧れた…正義の味方に成れる。…だから」

彼女が、手を振り払う。 寂しそうな、悲しそうな。 そんな表情を浮かべてから。


「その力を、正しい事の為に使って」


焼け落ちた屋根の破片が、彼女の―






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